【アメリカ渡航の最新情報はこちら】
アメリカ議会下院のジョンソン議長(共和党)は23日、議会にイスラエルのネタニヤフ首相を招致したと発表。パレスチナ自治区ガザで、イスラム組織ハマスと交戦する同国への支持を促す狙いです。一方で、住民を巻き込む紛争や人道に対する罪の疑いでICC(国際刑事裁判所)より逮捕状が請求されているネタニヤフ氏の招致に強い異論もあり、ガザ情勢をめぐる米国内の政治対立はさらなる激化が予想されます。
在米イスラエル大使館が開催したイベントに出席したジョンソン氏は、「イスラエル政府は今こそ市民が求めるリーダーシップを発揮する時だ」と強調。近日中に上下両院の合同会議でネタニヤフ氏が演説を行うと述べましたが、具体的な時期については明言を避けました。議会上院のシューマー院内総務(民主党)もネタニヤフ氏の招致に同意しており、議会では停戦や人質解放に向けた条件について質疑が行われる見通しです。民主党の一部からはイスラエル軍によるガザでの被害を抑止するため、同国への支援見直しを求める声が高まっています。また、米国各地の大学では政府のイスラエル支援に反発するデモが頻発しており、ネタニヤフ氏の訪米に関する抗議活動はさらに活発化する見通しです。ユダヤ系のシューマー氏は3月に「ネタニヤフ氏が中東和平の大きな障害になっている」と発言し、同氏が率いる右派連立政権の退陣を求めてきました。しかし、ジョンソン氏が「上院の同意がなければ下院単独でネタニヤフ氏を招致する」と強硬姿勢を示唆。公平性を重視する議会上院として足並みをそろえた形です。
ネタニヤフ氏によるアメリカ議会での演説は2015年3月以来となり、当時のオバマ大統領はイランとの核協議などをめぐり関係が冷え込んでいたため会談の開催は実現しませんでした。ネタニヤフ氏の訪米は来週中と予想されますが、バイデン大統領との会談については未定となっています。バイデン政権はICCによるネタニヤフ氏への逮捕状請求に反対する半面、イスラエル軍が進めるガザ南部ラファへの侵攻計画を激しく非難。およそ100万人の避難民が身を寄せているラファへの攻撃を止めるよう、同国の首脳らに説得を行っています。
今月20日にはICC(国際刑事裁判所)のカーン主任検察官がガザ情勢をめぐる戦争犯罪の疑いで、ネタニヤフ氏とガラント国防相の逮捕状を請求。さらに、カーン氏はガザを実効支配していたイスラム組織ハマスのハニヤ最高指導者とガザ地区トップのシンワール指導者、軍事部門トップのデイフ指導者も同様の罪で逮捕状を請求しました。