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11月5日に行われるアメリカ大統領選挙に向けて国内は次第に関心が高まり、民主・共和両党の政策に注目が集まっています。激戦が予想されるアリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ペンシルベニア、ウィスコンシンの6州に注力し、両党は近日中に具体的な公約を掲げる方針を示唆。大勢(たいせい)では無党派層の取り込みが焦点となり、多くの有権者はインフレ対策やロシア・中国を見据えた外交を中心にバイデン氏とトランプ氏の政策を比較するとみられます。
アリゾナ州
数百マイルにわたりメキシコと国境を接するアリゾナ州は、ビザを取得せずに越境する不法移民への対策が課題となります。国境管理の強化により違法な越境者はやや減少傾向にありますが、バイデン政権は今月5日に難民申請の受理を一時停止する大統領令を発令。1日あたりの不法越境者が1,500人を下回った際は難民申請の受理を再開する方針ですが、経済や治安に大きな影響を与えるとして州民は政府の移民政策を重視しています。また、州裁判長(共和党)が下した人口妊娠中絶の全面禁止も大きな争点となり、憲法上の権利をめぐり市民の間で激しい論争を繰り広げています。
ジョージア州
アフリカ系アメリカ人の割合が33%以上を占めるジョージア州では、黒人に対する差別など人種問題が最も大きな課題です。2020年の大統領選挙ではバイデン氏を支持する有権者が急激に増えましたが、今回の選挙は民主党に暗雲が立ち込めていると専門家は指摘。人種問題のほか経済対策も十分でないとする市民が増加し、バイデン氏の支持率は下降しています。一方で4件の刑事訴訟に問われているトランプ氏は、同州で選挙を妨害した罪で起訴され現在も公判中です。同氏は全ての不正行為を否定していますが、無党派層に与える影響は大きいと予想されます。
ミシガン州
アメリカで最も多くのアラブ系民族が居住するミシガン州は、パレスチナ自治区ガザの戦闘に代表される中東問題が最大の焦点です。2月末に同州で行われた民主党の予備選挙では、アメリカ政府にガザでの停戦とイスラエルへの軍事援助停止を求める活動家らが集結し大規模なデモを展開。州内10万人以上の有権者が投票用紙に「該当者なし」と記入し、民主党への不満をあらわにしました。一方のトランプ氏はイスラエルへの支援を続けるバイデン政権を激しく非難し、恒久的な停戦に向けて交渉を行う姿勢を強調。中東情勢の安定化を掲げ、戦争収束の重要性を市民に訴えています。
ネバダ州
多くのラテン系アメリカ人が居住するネバダ州は、雇用問題の安定化が大きな争点です。両党はラテン系市民の取り込みに注力し、現時点ではトランプ氏が支持率でややリードを保っています。これまでネバダ州は民主党が優勢でしたが、長引くインフレの影響に伴い共和党への鞍替えが目立つと専門家は指摘。同州の失業率は5.1%に上り、カリフォルニア州と首都ワシントンに次ぎ3番目に高い水準です。また、コロナ禍後の経済回復率も他州と比べ鈍化しているため、減税などの優遇対策を求める声が高まっています。
ペンシルベニア州
ニューヨークの西側に接するペンシルベニア州における大きな課題は、都市圏特有の急激な物価高です。特にエリー郡の物価上昇率は国内最高で、食品や日用品などの価格は高騰が続いています。同郡のアンケートでは住民の12.5%が「食料不足に悩んでいる」と回答し、低所得層への支援が急務であると自治体関係者は指摘。バイデン氏も自身が生まれ育った同州スクラントンに特別な思いを寄せており、経済対策の重要性を掲げて選挙戦に臨んでいます。また、過去2期にわたり同州で知事を務めた共和党のニッキー・ヘイリー元国連大使は党内代表候補選で善戦しましたが、3月に撤退を表明。今後はトランプ陣営に協力する方針です。
ウィスコンシン州
カナダに近いウィスコンシン州は、経済格差を解消する雇用体制の確立が争点です。バイデン氏とトランプ氏による二大候補の政策に反対する市民が多い傾向にあり、第三党として出馬したロバート・F・ケネディ・ジュニア氏への人気が高まりを見せています。同州ではかねてから無党派層が大半を占め、全米で最も三候補の接戦が予想されると専門家は指摘。トランプ氏はかつての出馬演説で「ウィスコンシン州を制する者が選挙戦を制す」と語っており、同州に対する強い意気込みを示しました。また、トランプ氏の代表候補指名を正式に認める今年の共和党全国大会は、同州ミルウォーキーにて行われる予定です。
参考元:BBC NEWS