アメリカ海洋大気庁(NOAA)の研究者たちは、絶滅危惧種であるハワイモンクアザラシと一般市民との関わりにおいてソーシャルメディアの活用が有用である考えを示し、監視や保護をするだけではなく、研究や教育分野においても活用すべきと発表しました。
NOAAの研究者であるMark Sullivan氏は2012年に自分のインスタグラムを始めた当初、”#monkseal”のハッシュタグを検索して投稿者とアザラシとの距離が近い写真や動画の多さに驚きました。
アザラシの個体数が回復傾向にある中で、人気のあるビーチがアザラシの休息や子育ての場として利用されることも多くなり、人間との接触が避けられなくなっています。しかし、投稿の中には傷跡や個体識別のマークがついたアザラシの写真も確認することができ、その度に心配の声が上がっていました。
そこで彼はソーシャルメディアの投稿を通じて利用可能なデータを分析することを考え、必要な情報の定量化と解析に成功しました。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)の研究者たちは2014年10月から2015年9月までの1年間、ハッシュタグ”#monkseal”がついている2,392件のインスタグラムの投稿を分析し、アザラシに対する人間の行動上の懸念を評価しました。その結果、分析した投稿の22%がアザラシの3メートル以内に近づいていることが分かったのです。
NOAAは人とアザラシは15メートル以上離れる事を推奨しているため、至近距離での接触はアザラシにストレスを与えるものとして注意を呼びかけました。また、投稿の18%ではアザラシがある種の妨害に対する反応(見る、離れる、口をあける、吠えるなど)を示しており、人間との接触の際に何らかの警戒をしているものと推測されます。
一方、サメに噛まれ傷を負ったメスのアザラシ”R329″は、研究者たちが追跡できなくなっていたため安否が気遣われておりましたが、ソーシャルメディアの投稿によりラナイで泳いでいる姿が確認できました。
ソーシャルメディアの投稿写真や動画は時々変更されることや撮影時期とのズレが生じるため、リアルタイムの情報は少ないものと考えられていました。しかし、投稿を分析すると正確な情報提供が多いことが分かり、ソーシャルメディアはアザラシの研究において効果的なツールになり得るとSullivan氏は結論づけました。現在、野生で生息しているハワイモンクアザラシは北西ハワイ諸島に約1,100頭、ハワイ諸島に約300頭のみとなっており、絶滅危惧種に指定されハワイ州法と連邦法の両方で保護されています。
ハワイの海やビーチでモンクアザラシと出会ったら、必ず適度な距離(15メートル以上)を保ちましょう。なお、Sullivan氏は一般の人々にハッシュタグ”#monkseal”をつけてソーシャルメディアへ投稿することを推奨しており、アザラシを写真や動画に収めることができた場合はインスタグラム等に積極的に投稿してほしいと呼びかけています。
ハワイモンクアザラシなどの海洋動物だけではなく、ソーシャルメディアを利用した解析や環境保護活動はこれかも活発化するものと予想されます。
参考情報:アメリカ海洋大気庁(NOAA)ウェブサイト
参考元サイト:West Hawaii Today
https://www.westhawaiitoday.com/2019/10/29/hawaii-news/public-is-often-too-close-to-monk-seals-study-finds/
ハワイモンクアザラシの研究・保護に対するソーシャルメディアの有用性