ハワイの伝統であるフラダンスとは?起源や鑑賞時のポイントを紹介
更新日:2024/10/09
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日本で“フラダンス”の名称で親しまれている“フラ”は、ハワイでは古代から伝わる踊りです。その優雅なパフォーマンスはハワイのエンターテインメントとして愛され、日本をはじめ世界各地で人気があります。この記事では、フラの魅力はもちろん、ハワイで何百年もの間受け継がれてきたフラのルーツや種類、鑑賞時のポイントなどを紹介します。
フラとは?
ハワイの伝統的な“フラ”は、踊り・楽器演奏・チャント(詠唱)を含む総合的な芸術です。フラは基本ステップに合わせて、花や風など自然への感謝、愛や喜びなどの感情をハンドジェスチャーや踊りで表現します。かつて古代ハワイアンたちにとってこの舞いは神への信仰を表す手段であり、また島で起こった出来事を言葉の代わりに後世へ伝える手段でもありました。これがフラの起源と言われています。
ハワイの人々にとってフラは、ハワイの歴史や文化を伝える神聖なものです。ただし、現在に至るまでフラは少しずつ形を変え、伝統を守りながら新たなパフォーマンスを取り入れたエンターテインメントショーとして、世界中の人々を魅了しています。
フラダンスとの違い
日本では一般的に“フラダンス”と呼ばれていますが、正しい呼び方は“フラ”です。“フラ“という言葉自体に”ダンス”や”踊る”という意味が含まれているため、フラダンスだと「ダンス・ダンス」という意味になってしまいます。ただし、フラが踊りであるということを分かりやすく伝えるため、日本ではフラダンスと呼ばれていることも覚えておくと良いでしょう。
フラの種類
フラには大きく分けて、古典フラ“カヒコ”と現代フラ“アウアナ”の2種類があります。ここでは各踊りの意味や違い、踊りのスタイルについて詳しく説明します。
カヒコ
“カヒコ”は、ハワイ語で“古い”や“古代の”という意味があり、古典フラのことを指します。クム(フラの指導者)がハワイ語でオリ(詠唱、踊りは伴わない)を読み上げた後、打楽器でリズムを刻みチャントを唱え、その音に合わせて踊る神聖な儀式です。カヒコに使用する打楽器は、ひょうたんをくり抜いて作られた“イプへケ”やヤシの木と鮫の皮が材料となる“パフドラム”などが代表的。またハワイでは、自然や自然現象などすべてのものには神が宿る(自然信仰)と信じられていました。そのためチャント(詠唱)の主な内容は自然への賛美や神に向けた祈り、ハワイの王者・首長への讃歌だったと言われています。
アウアナ
ハワイで約1世紀半前に登場した“アウアナ”は、欧米の音楽を取り入れたハワイアンミュージックと歌に合わせて踊る“現代”フラです。また、ハワイ語で“新しいスタイル”や“漂う”という意味があり、華麗なドレスを身に纏って踊る従来の方法とは異なる表現が特徴的。ギターやウクレレで奏でる演奏や、ゆっくりと漂うような優雅なパフォーマンスは見る人を惹きつけます。なお、ハワイのホテルやレストラン・バーなどで観られるフラのショーは、このアウアナが一般的です。フラの歴史
フラは、古い歴史の中で元の形を守りながらも現代と共に変化を遂げてきました。ここでは、今日に至るまでのフラの起源や歴史を紹介します。
フラの始まり
古代ハワイでは、ヘイアウ(神殿)で神とコミュニケーションを取るための儀式が行われていました。この儀式で、神々への祈りを捧げる表現方法に用いられていたのがフラです。ただし、アリイ(首長階級)とカフナ(神官)に支配されていた社会の中で、宗教的儀式に参加できたのは男性のみ。そのため、フラの原点は男性の踊りだったと言われています。また当時のハワイにはまだ文字がなかったため、ハンドジェスチャーでストーリーを表現するフラが島での出来事や神話などを後世へ伝える役割も担っていました。なおフラの起源には諸説あり、ハワイでは「森の女神ラカによって生まれた」言い伝えや、「火の女神ペレの妹であるヒイアカがペレの怒りを鎮めるために踊ったのが始まり」などの伝説も受け継がれています。
フラの禁止令
19世紀初頭、ハワイへやってきた宣教師たちがキリスト教を強いるため、自然崇拝を意味するフラを禁止しました。彼らはフラを低俗なものとみなし、当時の女王“カアフマヌ(カメハメハ2世の妻)”にフラの禁止を進言。カアフマヌは、フラの女神“ラカ”を祀っていた祭壇を破壊しました。さらに1830年には、公共の場でのフラを禁止する条例が施行されます。それ以降フラは約50年もの間、王朝の祝宴などの限られた場所で以外、表舞台からは存在を隠していました。その間、急速にハワイの西洋化が進みハワイの伝統的な文化であるフラは消滅の危機に瀕します。しかし長い禁圧の後、ハワイ第7代国王“デイヴィッド・カラカウア王”によって、フラは復興へと向かいます。
フラの文化の再生
ハワイ最後の女王“リリウオカラニ”は、ハワイの伝統文化を復興させることに尽力し、1874年にはフラの禁止令を解いて復活へと導きました。また、リリウオカラニ女王が即位していた1874年~1891年は「ハワイアン・ルネッサンス」とも呼ばれ、彼女の即位式では祝いの意味を込めてフラが踊られました。ドレスを着て歌いながら踊るなどの西洋文化を取り入れたパフォーマンス性のある新しいフラは、現代フラ“アウアナ”の原点となっています。フラの復活
その後1893年にハワイ王朝は終焉、1898年にはアメリカの準州となりました。しかし、この頃から自らのルーツを隠す人が増える中で、ハワイの文化を再興するため公民権運動が盛んに行われるようになります。その結果、フラの文化が見直されウクレレなどを取り入れた楽曲が次々と作られていき、新しいフラが広まっていきました。
また、古代ハワイアンの儀式的なフラも復活へと向かいます。フラが禁圧されていた時代にも、クムフラ(フラの先生)や一部の人によって唄と踊りが密かに守られていたため、現代にも古典フラ“カヒコ”が伝わりました。1964年には、現在も続いているハワイ最古のフラ競技会“メリー・モナーク・フェスティバル”が開催されます。
ハワイを代表するフライベント
フラの聖地であるハワイでは、さまざまなフラのイベントが開催されています。その中でも最も古く、ハワイ最大規模と言われるフライベントについて紹介。より楽しむために歴史や見どころをチェックして観るのがおすすめです。
※イベントは終了している場合があります。事前に開催日をご確認ください。
メリー・モナーク・フェスティバル/Merrie Monarch Festival(ハワイ)
1964年に始まった歴史あるフラの祭典“メリー・モナーク・フェスティバル”。ハワイ島ヒロで、毎年春のイースター(復活祭)から1週間にわたり開催されているハワイ最大規模のフライベントです。イベントの名前は、“デイヴィット・カラカウア王”のニックネーム「メリー・モナーク(陽気な王様)」に由来しています。ハワイの伝統芸術であるフラを復活させたカラカウア王に敬意を表し、また彼の芸術を愛する意思を引き継ぐために名付けられました。
このイベントは、1960年にハワイ島ヒロで起こった津波による被害から島を復興させる目的で創立され、当初は素朴なお祭りのようなものでした。しかし1971年にフラ競技が加わってからは、ハワイの伝統芸術であるフラを中心にした文化イベントとして再スタートを切ります。その後、“本物のフラ”を世界に向けて発信する一大イベントに成長し、「フラ界のオリンピック」とまで呼ばれるようになりました。現在は、フラの競技会やパレードを中心としたイベントが開催され、フラのパフォーマーにとって憧れの舞台となっています。なお、メリー・モナーク・フェスティバルでの受賞はフラ界での栄誉の証です。
入場料:一般席$10~$30/指定席$40~$55
開催日:毎年春に1週間開催
※2024年は、3月31日(日)~4月6日(土)に開催
定休日:なし
公式ウェブサイト:Merrie Monarch
【2024年】日本のフライベント
世界中で親しまれているフラは、ハワイだけでなく日本でもさまざまなイベントが開催されています。ここでは日本で人気のフライベントを紹介します。
※イベントは終了している場合があります。事前に開催日をご確認ください。
ラブハワイコレクション/LOVE HAWAII Collection(日本)
「フラとハワイ」をテーマにした日本最大級のイベント“ラブハワイコレクション”。2024年4月の開催で15周年を迎えました。このイベントでは、日本中からフラハラウ(フラスタジオ)のパフォーマーが一つの会場に集まり、圧巻のステージパフォーマンスを繰り広げます(※入場無料)。
また、ステージのほかにさまざまな物販ブースも出店しています。ロコモコやガーリックシュリンプなどのハワイ名物を堪能したり、ハワイブランドのアパレルを購入したり、フラ鑑賞以外にも見どころが満載です。
開催日:2024年4月20日(土曜日)午前9時30分〜午後7時30分、4月21日(日曜日)午前9時30分〜午後7時
公式ウェブサイト:LOVE HAWAII Collection
カ・ピリナ・フラ・フェスティバル 2024/Ka Pilina Hula Festival 2024(日本)
2022年に始まった“カ・ピリナ・フラ・フェスティバル”は、日本で開催されているフラの競技会です。ハワイからはクムフラたちが来日し、審査員として参加することでも知られています。
このイベントは、「時代や世代、場所にとらわれず、ハワイの伝統であるフラを通してつながる」をコンセプトとして創立されました。そのため競技会のほかに、直接クムフラからフラを学ぶワークショップなども行われ、すべての年齢層が楽しめるイベントとなっています。
開催場所:パルテノン多摩
開催日:ケイキ・オピオ・ワヒネ・ソロ部門(2024年4月27日)、グレイシャスソロ部門/ケイキ・ワヒネ・グレイシャス団体部門(2024年4月28日)
公式ウェブサイト:Ka Pilina Hula Festival
フラ鑑賞時に知っておきたいポイント
フラのパフォーマンスを観る際に知っておくと、より理解が深まり感動が伝わるポイントを5つ紹介します。
レイ
フラのパフォーマンスに欠かせないレイは、“絆”や“愛”の意味が込められたハワイの首飾りです。数千年も前から取り入れていたポリネシア人によってハワイに持ち込まれました。古代ハワイでは魔除けや神への捧げ物、権力の証として身に付けられていましたが、現在は友情、祝福、尊敬などのシンボルとなっています。レイは、お祝い事や歓迎の意味でプレゼントとして贈られるほか、重要なイベントの際にも使用されるなどハワイの人々の日常に根付いています。また、一般的な花を使用したレイ以外にも、ククイナッツのレイやマイレの葉のレイなどがあります。材料となる植物の種類によって意味も異なるため、贈る相手や身に着けるシーンで使い分けましょう。
なお、森羅万象の神を信仰するハワイでは、神聖な儀式であるフラを踊る際に神を崇める手段としてレイを身に着けていました。特に古典フラを踊る際は、ハワイ固有種の植物が用いられます。レイは首にかけるのが主流ですが、フラを踊る際は頭や手首、足首に付けることも。ステージごとに異なるため注目して見てみましょう。
衣装
フラの衣装はハワイ語でʻaʻahu(アアフ)と呼ばれ、ʻaʻには“生命が宿る”、”ahuには“結びつける”や“纏う”という意味が含まれています。現在はステージを華やかにするための衣装という印象が強いですが、元は自然や神と結ぶ役割を持った装束(衣服)であり神聖なものとされていました。この衣装は、“パウ”と呼ばれるスカート状の装いが代表的です。古代ハワイでは、樹皮を叩いて作るカパ布を巻き付けていました。なお、伝統的な古典フラではティーリーフを腰に巻き付けます。
振り付け
フラの振り付けは、ひとつひとつの動きに意味を持つハンドジェスチャーと足の動きを組み合わせて、感情や物語を表現します。足で表現する基本的なステップは、足を横にスライドさせる”Kaholo(カホロ)”、円を描くように足を回す”Hela(ヘラ)”、足を交差させる”ʻUwehe(ウヴェへ)”など。そのほかに体を使うステップは、円を描くように腰を動かす”Ami(アミ)”、踵を浮かせて体を左右に揺らす”Hula Hop(フラホップ)”、地面にしゃがんで体を揺らす”Haʻa(ハア)”などがあります。足や腰の動きで自然や波を表し、悪いものを祓うなどさまざまな意味が込められています。楽器
古典フラの演奏で使用するのは打楽器がメインです。種類豊富な打楽器の中でも、ひょうたんをくり抜いて作る“イプ”、1つだけ使用する“イプへケオレ”、2つのひょうたんを上下に重ねた“イプへケ”が代表的。また、小石という意味の“イリイリ”は小石を2つずつ両手に持ち、カスタネットのように演奏する打楽器です。赤と黄の羽であしらわれた“ウリウリ”は、ひょうたんや椰子の実に小さな貝などを入れてマラカスのように使います。そのほかにも50cmほどの竹に切り込みを入れた楽器“プイリ”やグアバの木の棒“カラアウ”などがあります。プイリもカラアウも、両手に1本ずつ棒を持ち叩くことで音を出す仕組みです。また現代フラのアウアナでは、ウクレレやギターをはじめさまざまな楽器を自由に使用し、ハワイアンミュージックを奏でる特徴があります。
ハワイ語
フラで歌われるハワイアンミュージックの歌詞には、自然や愛を意味する言葉がたくさん登場します。よく使われるハワイ語の単語を覚えておくとフラのパフォーマンスに対する理解が深まり、より伝わるものがあるでしょう。ハワイ語 | 意味 |
Puana(プアナ) | 歌の主題を要約する歌い出しの言葉 |
Aloha(アロハ) | 愛 |
haʻina(ハイナ) | 伝える、メッセージ |
ʻoe(オエ) | あなた |
Nani(ナニ) | 美しい |
Ua(ウア) | 雨 |
kuʻu(クウ) | 私の、私のもの、愛おしい感情を含む |