ハワイ語「オハナ」に込められた意味とその歴史とは?

ハワイ語「オハナ」に込められた意味とその歴史とは?

更新日:2024/07/18

ハワイ語「オハナ」に込められた意味とその歴史とは?

ハワイ語の“オハナ(ohana)”は「家族」や「一族」を意味する言葉です。ハワイが舞台の人気ディズニー映画「リロ&スティッチ(2002年)」に出てくる台詞の影響で、日本をはじめ世界中に広まりました。ただし、ハワイ語のオハナは日本で言う家族のイメージとは少し異なり、血縁関係だけでなく固い絆で結ばれた運命共同体のような関係も含まれています。この記事では、古代ハワイアンの生活や考え方から生まれた言葉“オハナ”込められた深い意味を詳しく解説。さらに、オハナの語源や歴史についても紹介します。

ハワイ語「オハナ(Ohana)」とは?

ハワイ語のオハナとは、血縁を超えて友人や隣人なども家族同様に敬い、気遣うことが大切とされています。オハナの真の意味を理解することで、古代ハワイアンの生活や想いをより深く知ることができるでしょう。

オハナの構成とクプナ

かつてハワイでは親戚一族が集まり、生活を共にする習慣がありました。親族を中心に複数の家族が、それぞれの役割を担い協力し暮らしていたと言われています。血縁関係にある家族が支え合う生活共同体、それが古代ハワイアンにとっての“オハナ”です。そのなかでもオハナを統率する年長者は“クプナ”と呼ばれ、親戚一族で生活する上での規則を設けていました。

古代ハワイの家庭では親世代が外へ働きに出ている間、祖父母や叔父、叔母、いとこが子供の世話をすることが¬多く、家族全員で子育てに関わっていました。現代でも家族を大切にする精神は引き継がれ、子供たちが親しみを込めて年上のいとこや大人を“アンクル(おじさん)”、“アンティ(おばさん)”と呼ぶ習慣が残っています。

オハナの規律と習慣

オハナの精神を大切にしていた古代ハワイでは、家庭内に不和が生じると神が怒り罰を与えられると信じられていました。これらの諍い(いさかい)や病気の原因を探り解決するために生まれた規律が“ホオポノポノ(Ho’oponopono)”です。ホオポノポノは、医療の知識が豊富なカフナや一家の長であるクプナが進行役となり、神へ祈りを捧げることから始まります。その後、被害者と加害者を明らかにし問題の内容や解決方法を話し合い、罪を許し合うことで問題を解決していました。

オハナの養子制度

古代ハワイには、“ハナイ(hanai)”と呼ばれる独自の養子制度がありました。この制度は、第一子を敬愛するクプナに預け、教育してもらうというものです。クプナは祖父母である場合が多く、男の子は父方の祖父母に、女の子は母方の祖父母の養子になるのが一般的でした。ただし、初孫以外にも優秀な子供はクプナが引き取ることもあり、これは血縁関係に限らずに愛するというオハナに基づいた制度とも言えるでしょう。

ハワイの伝説とオハナの関係性

ハワイの伝説とオハナの関係性 古代ハワイアンの間では、神話によりタロイモを先祖代々の親族と見なしていました。神話では“ワケア”という神と娘の間に生まれた第一子が死産(諸説あり)。第一子を埋めた場所からタロイモの芽が出た後に、“ハロア”と名付けられた最初の人類が誕生したと言われています。そのため、ハワイアンにとってタロイモは先祖であり兄弟姉妹のような大切な存在、また文化の一部と捉えられています。そして、この文化こそが現代のオハナの考え方の原点と言えるでしょう。
オハナについてハワイ文化研究者であるメアリー・カヴェナ・プクイ氏は「1つのタロイモから育つ芽のように、同じ血縁から派生した人たちがオハナを構成している」と説明しています。つまりオハナは、従兄弟や甥、姪に対しても家族と同じ絆があり、血縁関係を越えた隣人同士の関係も含まれると言われています。

オハナの語源

オハナの語源はハワイの伝説に登場するタロイモが由来となっています。オハナの“オハ(oha)”とは、タロイモの芽の部分を指しハワイ語で“繁殖”という意味を持ちます。またタロイモの芋の部分には、“オハー(ohā)”と呼ばれる球根の部分があり“呼吸のようなもの”という意味を併せ持ちます。なおどちらも発音が似ていますが、それぞれ別々の意味が込められています。オハナの“ナ”はハワイ語で“〇〇たち”という意味があり、オハナを直訳すると“呼吸するものたち”です。
ハワイの伝説では、神“ワケア”と娘の間にできた第二子が最初に人類とされています。死産した第一子の亡骸を埋めた場所からタロイモの芽が出たことから、人間はタロイモとオハナであると言われるようになりました。タロイモに込められた意味や性質(呼吸し繁殖する)もオハナを象徴しています。
またタロイモは非アレルギー性の植物で栄養価が高く、球根、茎、葉、すべての部分を食べることができるため古代ハワイアンにとって主食となる植物でした。加えてタロイモは神聖なものであり、ハワイの人々の繁栄を象徴しています。

オハナの考え方と種類

ハワイでは血の繋がりがない他人であっても、共に支え合う大事な仲間であれば“オハナ”と呼びます。会社の同僚や友人など生活する上で欠かせない関係も含まれるため、ハワイの住民はさまざまなオハナに属していると言えるでしょう。オハナの一例として下記のようなものが該当します。

  • 血縁関係
  • 養子を含む共同生活
  • 仕事関係
  • 趣味で繋がるコミュニティ
  • 教会関連

オハナは互いに協力し、助け合う存在です。各々が責任を持って支え合うことでこの関係は成り立ち、ハワイアンたちの繁栄にも繋がっています。またお互いに家族同然の存在であり、肉体的、精神的なサポートが欠かせないため信頼関係も求められます。このようにオハナとはさまざまな縁で繋がる人を受け入れる寛容な言葉であり、深い意味が込められています。

オハナの歴史と現在

古代ハワイではクプナのような身分が高い人物はマナ(神秘的な力、霊魂)の力が強いと信じられていました。親世代は敬愛するクプナに子供を養子として預け、生活様式などを学ばせたそうです。そのほかに王族や名家との関係を深める目的もありました。ハワイ王国最後の君主であるリリウオカラニ女王をはじめ、王族の中にも養子として義父母のもとで幼少期を過ごした人物もいたと言われています。
現在では昔のようなハナイ制度(養子制度)はなくなり時代に合わせて、文化や風習を順応させていきました。ただしハワイに古くから存在している「絆で結ばれた仲間を家族と同じように大切にする」というオハナの概念は、現在も変わっていません。

オハナの精神を表す行動

オハナの間では、互いを気遣い尊重することが重要とされています。また言葉の起源にタロイモが関係しているように、古代ハワイアンにとってオハナとは人間同士だけでなく、自然界との繋がりを含む環境概念であることを示しています。自然を守り、同じ地球に住むすべての仲間に対して敬意を示すことが、オハナの一員として遵守すべき行動と言えるでしょう。オハナの精神を表す行動として下記のようなものが該当します。

  • 必要最低限な分量だけ魚を獲る
  • 作物は他者と分けて食べる
  • フードロスを防ぐ
  • 環境汚染を防ぐ
  • 他者の安全を保つために社会的な規則を守る
  • 動物と共存し生態系を保護する

上記以外にも、「ゴミをポイ捨てせずにリサイクルをする」など基本的なマナーを守ることもオハナに対して敬意を表す方法のひとつです。

オハナに関連するハワイ語

ハワイ語 ハワイにはオハナに関連する言葉がいくつかあります。ここでは古代ハワイで用いられた言葉や、現代で使用される言葉などを紹介します。ハワイを訪れる前に知っておくことで、文化や挨拶に対する理解がより深まるでしょう。

カプ(Kapu)

Kapu “カプ(Kapu)”とは、古代ハワイアンが守っていた“社会の掟”を指します。英語の“タブー(taboo)”という言葉の語源になっており、現代で言う法律のようなものです。当時、カプは各島やオハナ内などで用いられていた掟とされ、共同生活を送るために互いの行動を監視し合うという細かい決まりもありました。また、魚を獲ってはいけない時期やエリアなど、自然を保護するためのカプも存在しています。代表的なカプ制度は以下のものが挙げられます。

カプ制度の種類 禁止される掟の内容
王族(首長)に対する決まり 王族(首長)の影を踏むこと
女性に対する決まり 男性との食事、漁の道具の使用
自然保護に対する決まり 池や滝など水源での水浴、魚の産卵の時期は禁漁
衣服に対する決まり 他人の衣服の着用

クプナ(kupuna)

“クプナ(kupuna)”とは本来“お年寄り”や“祖父母”という意味ですが、古代ハワイではクプナを尊重する風習がありました。生活する上での規則を設け、家庭内に問題が生じた際は規律である“ホオポノポノ”に則り、進行役を担っていました。
また昔にあったハナイ制度(養子制度)は時代の遷移と共になくなりましたが、現代でもクプナは“知恵を授けてくれる大切な人”という尊敬が込められています。ハワイアンはクプナから教わった文化や習慣を大切にし、そのまま次世代へと受け継ぐことで古代ハワイの風習は絶えずに残っているのでしょう。家庭内でも血縁以外であっても、常にクプナを優先する“敬老の精神”が現代にも変わらずに根強く残っています。

アロハ(aloha)とマハロ(mahalo)

ハワイには日本でも親しまれている“アロハ(aloha)”や“マハロ(mahalo)”という言葉が存在します。アロハは日本語で“こんにちは”、“さようなら”と訳しますが、自身の感情や経験を周りの人たちと共有するという意味もあります。また頭文字の1つずつには思いやりや喜びなどの深い意味が込められており、“アロハスピリット”を体現する言葉です。マハロは“ありがとう”という意味で、他者への感謝や称賛、敬意を表します。

どちらの言葉もオハナに直接的に関わる言葉ではありませんが、「互いに助け合い、分かち合おうとする心」が共通していると言えます。つまり、ハワイの人々の心と精神の調和とされる“アロハスピリット”には、オハナの精神が受け継がれていると言えるでしょう。以下ではアロハの頭文字を紹介します。

ハワイ語 意味
A:akahai(アカハイ) 親切、思いやり
L:lōkahi(ロカヒ) 統一、調和
O:ʻoluʻolu(オルオル) 喜び、心地よさ
H:haʻahaʻa(ハアハア) 謙虚、素直
A:ahonui(アホヌイ) 忍耐強さ
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