ハワイ固有の動物とは?動物の体系や水中で見られる生き物を紹介
更新日:2024/11/06
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ハワイ諸島には多くの動物が生息しており、ハワイ固有の生物とその地域以外の場所から持ち込まれた生物によって、独自の生態系が築かれています。ただし、外来種の影響で絶滅危惧種となっている生物も多く、積極的に動物保護活動が行われているため、ハワイ滞在中は動植物に対するさまざまなルールを守りながら楽しみましょう。この記事では、ハワイの固有種や外来種の種類と特徴、外来種がもたらしている影響などについて詳しく解説します。
ハワイ在来種の生態系
太平洋に浮かぶハワイ諸島は、500~600万年前に海底火山が隆起したことで形成された島々です。絶海の孤島であるハワイは陸続きの国と違い、動植物は限られた方法でしか根付くことができません。主に風や海流によって運ばれた種子によって動植物が繁殖、分化し、ハワイ独自の生態系が築かれました。
これらの動植物は生い茂る森林によって外敵から守られているため、ハワイの在来種の中でも約90%が固有種と言われています。しかし、人によって外来種の動植物が持ち込まれたことで、ハワイの生態系は大きく変化しました。現在もハワイの動植物は外来種の影響を受け、絶滅危惧種が増えています。
ハワイの在来種が絶滅の危機に瀕している理由
無人島だったハワイに初めて動物が持ち込まれたのは、紀元後500年~700年頃と考えられています。ハワイの在来種が絶滅の危機にさらされ始めた理由は、ポリネシア人がハワイに移住し動物を連れてきたことがきっかけです。18世紀後半には、海洋探検家“ジェームズ・クック(通称:キャプテン・クック)”がハワイ諸島を発見し、西洋人によってシカやヤギなどさまざまな動植物が運び込まれました。これらの外来種が原因で在来種の生態系が崩れ始め、ハワイ固有の動植物の生息数が減少し絶滅へと追いやられています。上述した通り、絶海の孤島であるハワイへ海をわたれる動物は多くありません。そのためハワイ固有の哺乳類は、空を飛べるコウモリ(ハワイアンホーリーバッド)と海をわたれるアザラシ(ハワイアンモンクシール)の2種類のみです。そのほかの固有種は、鳥類は約50種類、昆虫類は5,000種類以上、淡水魚類は5種類、貝類は1,000種類。ただし、これら固有種の中でも約10%は絶滅し、40%~50%が絶滅危惧種に指定されました。現在は、ハワイへ移住する人が増えたことも環境破壊が進んでいる原因のひとつとなっています。
先住のハワイ人が持ちこんだ動物が与える影響
ハワイの先住民であるポリネシア人がハワイに持ち込んだのは、ブタ、イヌ、ニワトリの3種でいずれも食用だったと言われています。これらの動物が運び込まれたことでハワイの生態系は変化し、在来種が病気にかかる原因となりました。例えば、当初ブタは家畜として持ち込まれましたが、一部野生化したことで在来種の鳥類や植物を中心に悪影響を与えています。豚が餌を探すために掘り起こすことで水たまりができ、蚊とともにマラリアが増え、免疫のない鳥類が減少。さらに、繁殖力の高い豚が植物を食べることで在来種の増殖が追い付かず、それに伴い草食動物も減少しました。このように、すべての動植物が影響し合い連鎖的に環境が変化しています。
外来種の影響を受けているハワイの在来種
ここからは、ハワイの在来種の中でも外来種によって絶滅の危機に瀕している動物を紹介。減少している理由を種類別に分けて解説しています。哺乳類
名称 | 減少の原因 |
ハワイアンモンクシール | 外来種のサメによる捕食、乱獲、環境汚染 |
ハワイアンホアリーコウモリ | 森林伐採、風力タービンとの衝突、気候変動、外来種であるネズミやマングースなどとの食糧争い |
鳥類
名称 | 減少の原因 |
ウミツバメ | ヒナや卵が野良猫に襲われることによる繁殖の減少、巣の場所によってはアジアマングースやカモメに捕食されることも |
ハワイミツスイ(ハワイミツスイ) | 外来種によって持ち込まれた鳥類の感染症、鳥マラリアや鳥ポックスによる病気、野ブタやネズミなどの外敵 |
ハワイアンムーヘン | 湿地の埋め立て、環境汚染、外来種のマングースやネズミによる雛の捕食、生息地の喪失 |
ハワイアンセイタカシギ(クロエリセイタカシギ) | 生息地となる湿地の劣化と野生のネコやマングース、ネズミなどの攻撃、外来植物の増殖による水位の低下 |
ハワイオオバン | 気候変動、外敵(主にマングース)による卵や雛の捕食 |
ハワイアンガリヌル | 土地開発が原因となる湿地の消失、ウシガエルやネズミ、マングースなどによる捕食 |
ハワイアンダック(ハワイマガモ) | 外来種のマガモとの異種交配による遺伝子汚染 |
ハワイアンフクロウ | 車との衝突や生息地の喪失、農薬が使用された昆虫を食べるネズミなどの小型哺乳類の捕食 |
ハワイアンガチョウ | 外来種動物などの攻撃、捕食と都市開発による生息地の喪失や変化 |
昆虫
名称 | 減少の原因 |
ハワイアンイトトンボ | 外来魚類による幼虫の捕食と生息地の環境変化 |
ハワイアントンボ | オタマジャクシやヒヨドリによる幼虫、成虫の捕食、生息地の喪失 |
爬虫類
名称 | 減少の原因 |
アオウミガメ | 卵の乱獲、海水の水質汚染、外来種の藻類を主食とすることによる腫瘍の発生 |
ハワイアンタイマイ | 乱獲、土地開発や外来植物による生息地の減少 |
貝類
名称 | 減少の原因 |
ハワイアン・ツリー・カタツムリ(ハワイマイマイ) | 外来種による捕食と生息地の破壊 |
ハワイ固有種の動物
現在、ハワイ固有種の動物の多くが絶滅危惧種に指定されています。ハワイ固有種の哺乳類は、ハワイアンホアリーコウモリとハワイアンモンクシールの2種類、鳥類は約50種類です。鳥類の中でもハワイ語で“ネネ”と呼ばれる“ハワイガン”はハワイの州鳥とされ、主に火山国立公園の周辺を生息地としています。なお、こちらのハワイガンも絶滅危惧種に指定されています。このようにハワイではさまざまな場所で珍しい野生動物を観察できますが、ハワイ州法に則り近づかないようにしましょう。以下では、ハワイ固有種の哺乳類と鳥類の一部を紹介します。
ハワイ固有種の哺乳類
- ハワイアンホアリーコウモリ
- ハワイアンモンクシール
ハワイ固有種の鳥類
- ハワイガン
- レイサンマガモ
- ハワイミツスイ
- ハワイオオバン
- キムネハワイマシコ
- ハワイシロハラミズナギドリ
- カワリハシハワイミツスイ
- オアフミツスイ
- レイサンハワイマシコ
- オウムハシハワイマシコ
- ニホアハワイマシコ
- カンムリハワイミツスイ
- カウアイキバシリ
- カウアイツグミ
- レイサンヨシキリ
- コハワイミツスイ
- カウアイミツスイ
- カウアイ・エレパイオ(ハワイヒタキ)
- コバシハワイミツスイ
- マウイキバシリ
- オアフ・エレパイオ(ハワイヒタキ)
ハワイ固有種の海洋生物
太平洋に浮かぶハワイの島々では、多種多様なハワイ固有の海の生き物に出会えます。魚類だけでも400種類以上が生息し、その約25%が固有種です。ここでは、ハワイの海岸やシュノーケリング中に観察できる珍しい海の生き物を紹介します。
サンゴ
ハワイ諸島で見られるサンゴは6種類ほどで、どれも暗い色合いと低い背丈が特徴です。プランクトンを主食にし、魚の産卵や幼魚の隠れ場所として生息しています。また、高潮から海岸を守る防波堤の役割も担っており、海の生物や環境に欠かせない存在です。
近年では、地球温暖化や環境汚染によるサンゴ礁の白化現象が問題視されています。そのため、ハワイ州では2021年に環境保護の一環として、サンゴ礁に有害となる成分を含む日焼け止めの販売を禁止する“サンスクリーン法”が施工されました。日本からの持ち込みは制限されていませんが、環境に配慮したものを使用するようにしましょう。
ウミガメ
ウミガメはハワイで“ホヌ”と呼ばれ、古くから神聖な生き物として大切にされてきました。また、地球最古の海洋生物の一種で、ハワイ諸島が誕生する約1億年以上前から生息していたと言われています。ハワイには、7種類のうち5種類のウミガメが生息し、アオウミガメ、タイマイ、アカウミガメ、オサガメ、ヒメウミガメをワイキキやアラモアナの海岸で観察可能。なお、海岸で見かけるウミガメのほとんどはアオウミガメです。
ザトウクジラ
ザトウクジラは、毎年冬の時期(12月~4月頃)に繁殖や子育てのため、暖かい場所を求めハワイへやってきます。そのため、この期間はホエールウォッチングのベストシーズンとして有名です。アラスカから海を渡ってくるザトウクジラの姿が見られるでしょう。
特にマウイ島、ラナイ島、オアフ島、カホオラヴェ島などの海域で頻繁に姿を見せ、ボートからはもちろん海岸でも見つけられます。海岸からホエールウォッチングを楽しむなら、海を一望できる“マカプウ・ライトハウス・トレイル”でのハイキングがおすすめです。
イルカ
ハワイでは、ハシナガイルカ、バンドウイルカ、マダライルカの3種類を見ることができます。なかでもハシナガイルカは人懐っこい性格が特徴。また、海面からスピンジャンプをして飛び跳ねることから“スピナードルフィン(Spinner Dolphin)”とも呼ばれています。
イルカを観察するには、ドルフィンウォッチングツアーの参加がおすすめ。ただし、ハワイ州ではイルカから50ヤード(約46メートル)以内に近付くことは禁止されているので、観察する際は注意しましょう。
ハワイアンモンクシール
ハワイアンモンクシール(アザラシ)は、世界で最も絶滅が危惧されている海洋哺乳動物の一種です。かつて、ハワイには約1万5,000頭が生息していたとされますが、一時期は300頭ほどまで減少しました。しかし2014年から保護団体が活動を開始したことで、2023年時点で約1,600頭にまで増加(※)。
ワイキキで頻繁に発見され、カイマナビーチでは砂浜で日光浴をしている姿が見かけられています。ただし、ハワイ州法によって50ヤード(約46メートル)以内に近付くことは禁止されているので、遠くから観察しましょう。
※参考サイト:NOAA Fisheries(NOAA 漁業局)|ハワイアンモンクアザラシ
サメ
ハワイには約15種類のサメが生息し、大型のものも含め“マノ(Manō)”と呼ばれています。岩礁の周辺にいるサメは基本的に穏やかな性格ですが、浅瀬で人が襲われるケースも稀にあります。そのため、夜の海水浴や一人で海に入るのはなるべく避けましょう。また、古代からサメの巨大な歯には“マナ(霊的な力)”が宿るとされ、歯はお守りや武器に、皮は楽器に使用されていました。
マンタ
世界にいる3種類のうち2種類のマンタがハワイに生息すると言われています。マンタは大型のエイの仲間とされており、海中の表層から中層を泳ぎ回ってプランクトンを捕食する習性があります。特に、ハワイ島のコナコーストはマンタが多く集まるエリアとして有名です。
またハワイのツアー会社では、夜間にマンタを観察できる“マンタナイトシュノーケリング”を催行しています。海中ライトに集まるプランクトンを食べにマンタが近付いてくるので、至近距離で見られる可能性も。暗闇に広がる明かりの中で、大きな体を躍らせながら優雅に泳ぐマンタの姿はとても神秘的です。